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名古屋地方裁判所 昭和45年(ワ)779号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二、本件事故の原因

<証拠略>を総合すれば次の事実が認められる。

(一) 本件事故現場は東海市名和町一番割中五〇番地先の南北に走る国道二四七号線と幅員3.4メートルの東西にのびる道路とが直角に交差する十字路交差点路上である。同国道は車道幅員20.2メートルの舗装された平坦な直線道路で、その両側に幅員各2.7メートルの歩道が設置され、センターラインを中に片側三車線に区分されている。現場の周囲は田で見とおしは良いが夜間は暗く当時は雨上がり直後のため道路はしめつていた。

(二) 被告伊藤は昭和四四年一〇月二五日午後九時頃、加害車を運転し、前記国道の第三車線(センターライン寄り)を半田方面に向けて時速約六〇キロメートルで南進し、本件交差点の約三〇メートル手前にさしかかつた際、左前方約37.7メートルの東西道路上を時速約四〇キロメートルの速度で交差点に向つて西進して来る正明運転の被害車を認めたが、同車が交差点手前で一時停止してくれるものと考えそのままの速度で直進した。加害車が交差点手前約10.8メートルの地点にさしかかつた時、被告伊藤は被害車が左前方約13.5メートルに迫り、一時停止することなく交差点に進入し、右折しようとしているのを認め、あわてて急停車措置をとりつつ、右にハンドルを切つたが間に合わず、自車前部を被害車に衝突させ、その衝撃で正明を路上に転落させて同日午後九時二七分死亡させるに至つた。

(三) 右認定の事実によれば被告伊藤の進行した国道は正明運転車輛の進行した道路よりも明らかに広い道路であり、正明は右国道に進入し右折しようとしていたのであるから、交差点の手前で一時停止しまたは少くとも直ちに停止し得る速度まで減速し、左右の交通の安全を確認したうえ、直進車である被告伊藤運転車輛の交差点通過を妨げないようにすべき義務があつた(道交法三六条、三七条)ものというべきである。したがつて国道のセンターライン寄りである第三車線を直進していた被告伊藤には右一時停止または徐行義務に違反し、狭い左方道路から国道上深くまで進出して来る車輛のありうることまで予想して自車の速度を減速すべき注意義務はないと解するのが相当である。

もつとも当時加害車が時速約六〇キロメートルで進行していたことは一応問題であるが、かりに時速五〇キロメートルで進行していたとしても、被告伊藤に減速義務がないものと考えられる以上、正明の過失があれば結果の回避はまず不可能であろうことが推認される。

三、被告らの責任

そうすると、被告伊藤については本件事故につき過失がなかつたものというべく、同被告には本件事故による損害賠償責任はないものといわねばならない。

前掲甲第四号証によれば被告会社が当時、加害車を保有し、これを自己のために運行の用に供していたことが認められる。しかし本件事故発生について被告伊藤に過失がなく、被害車である正明に過失があつたことは前認定のとおりであり、被告会社の過失の有無や加害車の機能の障害、構造上の欠陥の有無が本件事故発生と何らの因果関係も有しないことは前記事故発生の状況からみて明らかであるから、被告らの免責の抗弁は理由がある。 (納多貞介)

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